WAXの成分とSRVテストから考える

WAXの成分とSRVテストから考える

最近人気のリキッドタイプのチェーンWAX。海外のレビューやZFCのデーターなどでもブレークイン(慣らし)を行った方が良いと書かれていることが多い。しかし具体的な方法が書かれていることはない。これはHOTWAX系も同じでMolten Speed Wax以外はきちんとした説明はない。そもそもブレークイン(慣らし)とはなんだろうか?

それはWAXINGの際のWAXの偏りを修正したいから。一般的にWAXはピンとプレートとの直接接触を防ぐと言われています。しかし、実際にWAXを施行すると硬化するまでの時間にチェーンの自重やテンションで引っ張られピンとプレートが接触した状態や薄なった状態で固まってしまします。それを修正するのがブレークイン(慣らし)の役割です

では実際のブレークイン(慣らし)で起こる現象を見てみましょう

摩擦熱による局所的液化:

ブレークインで負荷をかけると、金属同士が接触しそうな箇所の摩擦熱が上がり、周囲のワックスが一時的に緩んでその隙間に毛細管現象などで吸い込まれます。

固体潤滑剤の配置: 

多くのワックスに含まれる個体潤滑剤を、最も圧力のかかるポイントに「物理的に磨り込む」効果もあります。

つまり、ただ回せばいいのではなく、てワックスを理想的な配置に送り込む作業、だからこそWAXを再融解させるための熱が必要になるわけです。

しかし、WAXに多く使われている固形パラフィンには特殊な特性があります。一般的なオイルであれば熱が入ると粘度が柔らかく変化します。この温度による粘度変化を粘度指数(VI)として表しますが、固形パラフィンにはその概念はありません。

個体パラフィンは個体から液体に一気に変化します。これをシャープメルト特性などと呼びます。その為、液化する前に大きなトルクを掛けるとWAX成分が押し出されたり、割れて破壊され外部に押し出されたりします。そして固形パラフィンは液化すると非常に低粘度なオイルとして変化してしまいます。この際に粘度を維持するため各社、添加剤などを加えるなどしていますが、温度による変化は大きくは変わりません。

では実際のHOTWAXの場合どれぐらいの熱が必要なのでしょうか?

前回は実験で溶解温度と溶解した状態を確認しましたが、HOTWAXはメーカーからデータが出されていますので見てみましょう。

メーカー・製品名

成分的な融点

(溶解温度)

備考

Silca
(Secret Chain Blend)

約72℃ 高純度パラフィンと4種類のエステルを配合。
Molten Speed Wax 約68℃ 〜 70℃ 工業用最高グレードのパラフィンがベース。
AbsoluteBlack (GRAPHENwax) 約80℃ 特殊な柔軟性を持つポリマーとグラフェンを配合。

 

思ったより高い温度ですね。前回の実験のリキッドWAXとは溶解温度が違います。この温度までゆっくりと上げていかないとブレークインを正しく行うことはできません。MOLTENによると小さなスプロケットで200Wから250Wほどで開始しして欲しいとしていますが、この出力で溶けるということは、実際の走行でも溶けてるんじゃないのGOTALは思っているわけです。さらに、ブレークインが終了したとしても、溶けた状態から自重やテンションで元の状態に戻るのではないのか?  この2点をテストして確認したいと思っているわけです。そもそもブレークイで溶けてるのなら実装は溶けた状態じゃないのと感がるのが順当です。この辺りもの話も、メーカーは語りません。そのためテストしたいと思っています。

しかし、ZFCなどが使うベンチテスター方式ではチェーン内部の摺動面温度のリアルタイムな観測はできません。そこで通常潤滑油の開発ではSRVテスターを利用します。このテスターは潤滑油開発や評価ではISO規格の世界基準のテスターです。産業界などではこのテスターの利用はメジャーですが自転車業界で使っているのはMUC-OFF意外でみたことはありません。非常に高価なためと思われます。機器は基本セットで1億円近い金額です。

もちろんGOTALに買えるわけはない金額ですが、公的第三者機関からお借りして利用させていただきました。この機器そのものはリンリンプロジェクトのものです。競輪選手の皆さんありがとうございます。自転車業界のために使わせていただきました。

 

ではこのテスターを使った実験結果を見てみましょう。チェーンのすべり軸受に近づけるためシリンダー&プレート方式でチャンバー温度40℃で行っています

グラフの読み方

赤:摩擦抵抗(摩擦係数) 黒:荷重 黄:温度(ジグから取得の為時間差が発生)紫:振動

荷重200Nはチェーン内部換算で150-200W相当 

SECRET BLEND HOT MELT WAX

事前に加温し、プレート面に伸ばした状態で硬化させ実験スタート。テスト開始時は摩擦抵抗は下がるが、荷重が上がると摩擦も一気に増える。それに伴い温度上昇するがテスター自体が振動を検知してしまい焼き付きと判定をしてテスト終了。三回繰り返したが判定は変わらずであった。

FINISHLINE Ceramic Wax Chain Lube

200Nの荷重では40℃から変化なし、摩擦抵抗は上下し、これがブレークイン前にジャリジャリすると言われるフィールを表しているものと思える。プレート振動からもスパイク値を検出。負荷を500Nまで上げると抵抗値は落ち着く。これは温度が上がり液化したことでまたつが減少したものと考える。その後荷重ごとに摩擦係数は下がるがそれに伴い温度も上昇。

SQUIRT ( スクワート )

このWAXはパラフィンベースではなくペトロタムベースの乳化型と思われる。200N時も安定はしているが、潤滑効果は低い。荷重を加え温度が上がると摩擦はある程度まで抑制される。

さて今回いくつかの代表的なWAXのデータを掲載させていただいた。意外にも個体で潤滑すると思われているWAXだが温度依存度が高いことがわかると思う。

これからもGOTALの実験は続きます。

 

 

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